ぐるりのこと。

Posted: 10月 10th, 2008 | Filed under: 文芸

♪何でもないようなことが~
  幸せだったと思う~



■ストーリー
何でもキチンとしていないと気が済まない翔子。
そして、ちょっとだらしない夫のカナオ。

周囲からはダメ夫と陰口を叩かれながらも、身籠った体と授かった命に精一杯の幸せを噛みしめていた。

でも、身勝手な周囲に振り回されて、次第に翔子は鬱になり精神の均衡を崩していく。
カナオは全身でそれを受け止め、支えていく。
10年という歳月をかけて、ひとつづつ障害を乗り越え、お互いを支え合っていく…



■ドロ臭いけど暖かい
なんとも人間くさいドラマである。
そこには、きらびやかなテレビドラマの世界も、夢あふれる映画の世界もない。
ただ、淡々と日常風景が描かれていく。

なんでもない日々。
なにもおこらない日々。

でも、それが何よりの幸せだと気づく。

周囲の身勝手さに翻弄されても、自分の核となるものを見つけ、それに没頭していくことによって、次第に自分を取り戻していける。

そんな、喪失と再生の物語だ。


■俳優デビューのリリー・フランキー
リリー・フランキーといえば、小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」、絵本「おでんくん」で人気の作家だが、映画初主演となった本作で、俳優としても開眼となった。

感情に抑揚があまりないけれど、ダメさ、うだつの上がらなさを演じさせたらピカ一といったところか。ビミョ~な北九州弁も面白い。
ここに監督・橋口亮輔のキャスティングのうまさが光る。

周囲の俳優陣もかなりアクが強い。
倍賞美津子、柄本明、寺田農、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人など、ひと癖もふた癖もあるような役柄を演じている。それぞれ人間くささが描かれていて、これもうまい。

演技が一番素晴らしかったのは、木村多江。
周囲に翻弄されて次第にふさぎこんでいく様子から、鼻水号泣、そして自分がやるべきことを見つけて立ち直っていく姿に圧倒された。



■時代背景とともに10年を追う
1993年冬から9・11テロに至るまでの約10年間が舞台であり、法廷画家となったカナオが描き出す裁判所での出来事が、現実の事件にシンクロさせており、世相の移り変わりを反映させている。

そこに描かれる負の世界に、次第に世の中が不条理なものへと変わっていっていることがわかる。

そんななかにおいても、作品では「どうすれば人は希望を持てるようになるのか?」を見つめつづける。

そして、人と人とのつながりの中に、ささやかな日常の中に希望はあるのだと知る。



小さい手っていいよね。握ったとき大きく見えるし(笑)



・出演:リリー・フランキー、木村多江、倍賞美津子、柄本明、寺田農、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人
・監督:橋口亮輔
ぐるりのこと。

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