ダーウィンの悪夢

Posted: 10月 10th, 2008 | Filed under: ドキュメンタリー

一匹の魚から始まる悪夢のグローバリゼーション


人類発祥の地、アフリカ中央・タンザニアにあるヴィクトリア湖はナイル川の源流であり、世界第二位の広さを持つ湖。

かつて、多くの種類の生物が暮らし「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていたが、外来種であるナイルパーチと呼ばれる巨大な肉食魚がわずかバケツ一杯分放流されたことで、状況は一変。
食肉用であるこの魚は、白身魚としてヨーロッパを中心として日本にも輸出され、タンザニアの一大産業となっている。

しかし、一方で、湖の在来種の多くはナイルパーチにより絶滅。在来種により保たれていた湖は豊栄養化して濁るなどして環境悪化。

ナイルパーチ漁をする人は湖でワニに襲われ、治療する施設もないため死ぬ。
漁師である夫を亡くした妻は、街に出て売春をする。
孤児達はストリートチルドレンとして物乞いをし、少女は売春をする。
そしてエイズの蔓延。半年で45人もエイズ感染で死ぬ住民のいる村も発生。
子供達はナイルパーチ輸出用の梱包材を燃やして自家製のドラッグで恐れを紛らわせる。

ナイルパーチが一大産業であっても、すべてのタンザニア国民が潤っているわけではない。職にありつけない者が多数で、貧困の差は拡大している。
そして人々は金になる戦争を望む。

ヨーロッパに輸出するために飛来する輸送機は、紛争地域に武器を運んでいる疑惑を持つ。パイロットもまた、現地の女を買う。



すべてはヨーロッパのために、ヨーロッパの富と欲望のためにアフリカが犠牲になっている。
さらに衝撃なのは、ナイルパーチは数年前までは日本へも”白スズキ”という名で流通していて、現在も白身魚として食べられているという事実だ。

欲望を満たす一方で、貧困や紛争をもたらす。
遠い国で起きていることが、自分たちの生活にも影響しているということを知る。

グローバルマネー、恐ろしや。


フランスでは本作品が公開された後、ナイルパーチのボイコット運動が起きたそうだが、ナイルパーチを食べなければ済む問題ではない。



Tips
・2006年アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞ノミネート
・2006年セザール賞最優秀初監督作品賞
・2004年ヴェネツィア国際映画祭ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞

監督:フーベルト・ザウパー
ダーウィンの悪夢




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