俺は、君のためにこそ死にに行く

Posted: 10月 10th, 2008 | Filed under: 戦争, 文芸, 青春

貴様と俺とは”狂気”の桜
  ~桜舞う季節に飛ぶ蛍に見る、戦争の狂気


昭和19年(1944年)秋、特攻隊の出撃基地となった鹿児島県知覧町を舞台に、若くして命を散らしていった特攻隊員と彼らに暖かく接して出撃する最後まで見送っていった食堂経営者・鳥濱トメさんとの交流を軸に描くストーリー。

■特攻隊をめぐる話
太平洋戦争末期、日本軍は圧倒的に劣勢を強いられ、戦闘機に250キロの爆弾を搭載して敵艦に体当たりして攻撃する「特別攻撃隊(特攻隊)」を編成することとした。

既に戦争に負けることを見越していた日本軍の、「負け方の美」「喧嘩にも負け方がある」「一億総特攻の先駆け」「連合軍へ本土上陸を困難と見せるために」「国家の体面」などの大義名分で編成されたのが特攻隊でもあった。

  ・特別攻撃隊 -Wikipedia


全国各地から志願という形で集められた若者たちは、「お国のため」という名目で薩摩半島の端、薩摩富士と呼ばれる開聞岳の麓の町「知覧」に集められ、飛行訓練ののち、戦闘機「隼」に搭乗して、沖縄に進攻している連合軍艦隊に突入していく。

しかし、連合軍艦隊の猛攻で上空で撃墜され、連合軍の軍艦に体当たりすることなく海に墜落する機も多数であった。

そして、1945年8月6日に広島へ、同年8月9日に長崎へ原爆が投下され、戦争は終結する。

戦後長い間、特攻隊として出撃して死んでいった者が弔われることはなく「犬死(いぬじ)に」と呼ばれ、生き残った者は「特攻くずれ」と呼ばれ、蔑まれた。

また、「靖国神社で会おう」とともに出撃しながらも生き残った者は、なぜ生き残ったのかを問い続け、生き残ったことに対して罪の意識にさい悩まされ、戦後も試練を受けることとなった。


■「特攻の母」鳥濱トメさんを演じた、岸恵子さん
当初、石原慎太郎によって書かれた脚本は戦争は美しく切ないもの、という感じがあって、素直に出演を引き受けることはできなかったとのこと。

石原氏と何度も話し、もっと戦争に対する怒りがあった方がいいなどという点について、かなりの意見を取り入れられている。

本作品では唯一の戦争経験者である岸恵子さんは、子供だった頃の昭和20年の横浜で大空襲に遭ったそうである。防空壕に入れという指示には従わず、「同じ死ぬにしても暗い穴の中では嫌だ」と木に登って助かった。
一方、防空壕に避難した大半の子供は死んだ。そのときに日本の敗北を悟ったそうだ。

鳥濱トメさんを演じるに当たっては、演技として本人に似せるのではなく、自分からの反戦メッセージを込めて表現することに徹したとのこと。
それは、鳥濱トメさんが明日にも出撃して命を散らしていく若者に対して無償の愛を注ぎ続けた慈悲や、夜の食事会を批難されて憲兵に連行されて盾突くシーンに見れるような芯の強さによく表れている。


■石原慎太郎が込めたメッセージ
石原慎太郎氏は縁あって、鳥濱トメさんから当時の特攻隊員の真実を聞くこととなり、後世に残すために鳥濱トメさんの話を題材とした映画を作った。

本作品の主題は青春であり、青春群像劇として描いたとのこと。
若者に向けて描かれた作品であり、自分たちがかけがえのない青春という時代に生きていることを自覚することを促すものだ。



■知覧特攻平和会館
鹿児島県知覧町にある「知覧特攻平和会館」は、特攻隊員の遺品や資料を展示し、戦争の悲惨さや虚しさを伝え、平和を祈念する施設だ。
映画にも出てきた三角屋根の宿舎や復元戦闘機も保存されている。


知覧特攻平和会館 知覧特攻平和会館の戦闘機「隼」
自分は知覧町には何度も来ているのだけれど、知覧特攻平和会館には一度しか入場したことがない。
何人も案内したけれど、何度も入れない。
自分は入口で待ち、神妙な表情で出てくる入場者を迎えるだけだ。

それは、そこに入れば必ず涙があふれずにはいられないからだ。

若くして命を散らしていった人たちの遺書・出撃前に家族に宛てた手紙などを読めば、その志の潔さ、清さ、美しさに涙するのは間違いないだろう。


  ・知覧町役場 観光情報に「知覧特攻平和会館」へのリンクがあります。

開聞岳




戦争当時、生きたくても生きられなかった人達、理不尽な死を強要された人達を思えば、いま「生きること」を軽々しく論じ、安易に自ら命を絶ってしまったり、家族や隣人を平気で殺害してしまうこの世界が、あまりにも弱々しく、迂闊だと思い知るだろう。
現代がたとえ豊かで恵まれたものであっても。


ベタなセリフだけれども、この真実を知り、後世にまで語り継ぎ、今ある平和は、彼らの尊い犠牲の上に成り立っていることを今一度理解する必要があるということを再認識する。

そして、もっと鮮やかに、今を一生懸命に生きることを決意しよう。




映画館から外に出ると、平和な空と街並みが広がっていた。

平和な空


  +++++++++++++++++++++

■案外まとも
タカ派と呼ばれる石原慎太郎氏による脚本・製作総指揮なので、ちょっと心配だったけど、案外まともだった。
だけど、映画としての出来は60点くらい。

だいたい、このタイトルどうなの?
映画館の窓口で声出すのダルいんですけど。

というか、窓口のおねえちゃんが可愛い人だったら、こっぱずかしいと思うよ。
真顔で「俺は、君のためにこそ死にに行く」と窓口のおねえちゃんの目をまっすぐに見ながら目を潤ませて言う人がいたりして。。

モテモテじゃん、窓口の人。みたいな。


「俺は、君のために死にに行く」の「君」とは家族でも愛する人のことでもなく、「天皇」でしょ。
もうちょっと考えて欲しかった。

東映は去年の「男たちの大和 YAMATO」でヒットしたのに味をしめ、この路線で行くことにしたのかと。

スクリーンサイズがワイドスクリーンサイズではなく、TVサイズだったのは後々のTV放映を意識したものなのか、時々挿入される戦時中の実録戦闘シーンの映像サイズに合わせたからなのかはわからない。
こういうところが、いかにも東映的だ。


■リアルなVFX、ようやく日本もここまで来たか
沖縄進攻中の連合艦隊に対する特攻シーンは少なめだけど、VFXシーンはよく出来ている。
男たちの大和 YAMATOを超えたと言っていい。
男たちの大和 YAMATOでの大和を攻撃する米戦闘機のショボさ、CGの丸わかり具合、動きの鈍さのせいで、いまいち画面に入り込めなかったことと比べると雲泥の差。

とてもリアルで、本当に自分が沖縄上空から連合艦隊を俯瞰して見ているような錯覚を覚えた。戦闘機の動き、爆発シーン、どれをとっても合格点を与えていい。日本のVFXもようやくここまで来たかと感慨にふけることしきり。


■泣けるかというと・・・
浪花節全開で随所に泣き所が満載だけど、反戦メッセージとしてはありふれたもの。
号泣するほどかというと、そうでもない。
男たちの大和 YAMATOではうまく観客を泣かせることができたけど、この作品では涙腺決壊一歩手前といった感じ。

それは、たくさんのエピソードを詰め込みすぎたため、シーンのつぎはぎ感があったためだろう。
涙が流れそうになったと思ってたら、すぐ別のシーンが始まったりして、アレレ?という感じだ。

とりあえず、ラストでひとすじの涙が出てきたけど。


VFXの出来のよさは本作品に軍配が上がるけれど、泣かせる作品としては男たちの大和 YAMATOの勝ち。


■諸外国の靖国参拝批判へのアンチテーゼ
やたらと「靖国神社で会おう」のエピソードが出てきたけど、石原氏の思い入れの部分だよなぁこれって。
ようするに、諸外国から靖国神社参拝の批難を受けていることに対してのアンチテーゼ。
戦争犠牲者が祀られている靖国神社を参拝することについて、諸外国から批難されるいわれはないってこと。


■果たして、ターゲットである若者がどれくらい見てくれるのか
自分が見に行った日は、観客のほとんどがお年寄りだった。
若者へ向けた作品ということだったけれど、観客がノスタルジックなものを求めた年寄りばかりじゃぁ、石原氏も成果を出せたとは言えまい。

商業的にはそこんとこどうなんでしょう?




・出演:徳重聡、窪塚洋介、筒井道隆、岸恵子、伊武雅刀、的場浩司、戸田奈穂、中越典子
・製作総指揮/脚本:石原慎太郎
・監督:新城卓
・主題歌:B’z 「永遠の翼」
俺は、君のためにこそ死にに行く




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