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硫黄島からの手紙

Posted: 10月 10th, 2008 | Filed under: 戦争

常に諸子の先頭に在り



クリント・イーストウッド監督「硫黄島」2部作第2弾。

本作品は、当初「父親たちの星条旗」だけを製作する予定だったクリント・イーストウッド監督が、この「硫黄島での戦い」について調査するうちに日本からの視点で「硫黄島」を描く必要があると決意して製作されたもの。

1945年2月19日、アメリカ軍の上陸とともに始まった硫黄島戦を、日本軍側の防衛準備、戦闘、アメリカ軍に占拠され戦闘が終結するまでを淡々と描き切る。

アメリカ側が5日で終わると予測していた戦いを36日間守りぬいた日本の兵士たち。しかしながら、その戦いは飢えと病苦と葛藤と絶望に満ち、死ぬより辛い36日間だったに違いない。

クリント・イーストウッド監督は、本作品において「硫黄島の戦い」を正確に描くことを念頭において製作している。
日本軍の指示伝達の不備、上官に逆らう将校たち、上官の指示に従わない兵士、「靖国で会おう」と自決していく兵士、脱走兵を銃殺する上官、投降するもアメリカ兵に殺されてしまう兵士、そして栗林中将以下の日本軍兵士が家族にしたためて届くことのなかった無数の手紙。

いま、61年の時を経て、現代を生きる私達のもとに届く。

中盤のセリフの
「これからは自分の思うとおりにせよ。正義を貫けば、それは正義になる」
「いつか時が経って、我々のことを祈ってくれる人がいる」
が耳に残る。

この硫黄島の戦いで、日本側は2万2千人、アメリカ側には6000人もの犠牲者が出た。
繰り返された言葉だが、我々の生活は彼らの犠牲の上に立っていることを忘れてはならないだろう。

そう思えば、いまの世の中で自ら命を絶ってしまうことはとても愚かなことである。
戦時中は、誰もが生き延びたい、と思ったはずだ。
生きて、国に帰りたいと思ったはずである。
戦時下の国策に洗脳され、国のため自決していった人たちはいたが、戦時下でなければ死ぬのは本望ではなかったろう。

戦時中のつらさを考えれば、いまの世の中で起きる生きるつらさなど、恐るるに足らないと思うが、どうだろうか。


本作品では戦時下の日本の精神を美化するような描写はない。淡々と描いているのみだ。
かつては敵同士だったアメリカと日本が、ちからを合わせて本作品が製作されるあたり、アメリカの奥深さを感じざるを得ない。
それは多くの日本人がアメリカに渡り、大リーグや実業家として成功を収めていることを認めていることからもよく理解できる。

日本の東と西北に位置する隣国が製作したらこうは決してならないだろう。


クリント・イーストウッド監督はよくも描いたものである。真の男といってもいい。
歳を取るごとにいい作品を撮る。
歳を取るごとに権威ぶって、自己満足するだけのわけのわからない駄作を作るわが国の監督とは大違いだ。
この際、日本映画はクリント・イーストウッドがすべてメガホンをとればいいのではないだろうか。冗談を抜きにして。

本作品はほとんどが日本語で語られているが、監督はセリフではなく俳優たちの演技でカットにOKを出したそうだ。
「心がこもった演技」にOKを出す。さすが俳優出身の監督である。

ただし、ジャニ系の俳優もどきはクリント・イーストウッド曰く「天才」と評価しているそうだが、まだまだ発展途上。
渡辺謙と伊原剛史はピカイチ。
裕木奈江は、エンドロールで “NAE”と表記されていたが、既に裕木奈江自身がロサンゼルスに拠点を移しているから?


Tips
・2006年の米映画批評会議・最優秀作品賞受賞
・第64回ゴールデン・グローブ賞・外国語映画賞受賞



出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛史、加瀬亮、裕木奈江、中村獅童
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、スティーブン・スピルバーグ
硫黄島からの手紙




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