キャタピラー CATERPILLAR
Posted: 8月 19th, 2010 | Filed under: 戦争
戦争に正義などない
■ストーリー
第二次世界大戦時の日本、田舎から青年が戦地へと兵士として赴任した。しかし、青年は両手両足を失くし、頭に大火傷、喉を傷つけて声が出ない姿となって帰国した。
3つの勲章を授与され、生きた軍神として田舎の誇りと崇めたてられる青年は、食欲と性欲だけは旺盛で、夫である青年に尽くす妻の体を夜毎求めていた。
大本営発表による嘘の戦局報道に喜ぶ夫婦。
しかしそれは、五体不満足となった夫を慰める口実であった。
しかし、やがて敗戦のときがくる。そのとき、夫は・・・
■忘れるな、これが戦争だ・・・
世界のどこかで戦争は起きているものの、日本が関与した戦争を語り継ぐ者が少なくなり、すっかり平和ボケした感のある日本に、戦争を忘れさせないために作ったという本作品は、2010年ベルリン国際映画祭・コンペティション部門で銀熊賞最優秀女優賞を寺島しのぶが受賞した作品でもある。両手両足を失い、声を失い、頭の半分は大火傷で焼けただれ、変わり果てた姿となって戦地から返ってきた青年とその妻をめぐる人間模様を描くものだが、どこまでも救いがない。
生きた軍神と呼ばれ、勇気果敢に戦地に赴いたというのは、国民に敗戦色濃い戦局を隠して嘘をつき続けた大本営の嘘である。
青年は「お国のための御奉公」として戦い、戦って負傷して生きて帰ったとして3つの勲章を授与された。しかしそれは、「立派な勲章を授与された」と無理やりにでも思い込んでなければならないほどの家族と集落の苦痛であった。青年にとっては、戦地で行った蛮行に対する皮肉でもあった。
妻は夫である青年の世話をするが、ずっと身を呈して尽くすわけではない。軍神と呼ばれても、所詮は夫婦、人間としての感情はある。憎悪や復讐心もある。
「国に尽くすこと」に疑問を感じるのも当然のことである。
敗戦後、軍神と崇められた青年がとった行動が、苦労を重ねた妻を救ったのかも知れない。
戦争は何もかもを奪う。
家族も夫婦の絆も、笑顔さえも。
人間としての理性も奪う。
・出演:寺島しのぶ、大西信満
・監督:若松孝二
■キャタピラー公式



